直流機の誘導起電力、電機子反作用
2023/02/10
磁極間でコイルを回転させると誘導起電力が発生します。電機子電流が主磁極による磁束分布に与える影響を電機子反作用といいます。
これらについて、理解しやすく書いている記事です。
電験三種(機械)の過去問題も書いてあります。

界磁巻線に電流を流すと鉄心に磁束が発生し、端がN極とS極になります。
この空間に回転子(ローター)を設置します。
回転子の軸には整流子をつけてあり、回転子にコイルを巻いて整流子に接続します。整流子にはブラシ(黒鉛)が押し付けてあります。

図は1つのコイルですが実際には多くのコイルが巻かれています。
コイルをN極、S極の間で回転させると誘導起電力が発生し、この誘導起電力は交流電圧なので、整流子とブラシにより直流電圧として取り出します。このように発電するのが、直流発電機です。
脈動の小さい電圧を得るために、多くのコイル、整流子片を用います。コイルの集合体のことを電機子巻線といいます。
重ね巻は並列巻とも呼ばれ、定電圧大電流に適しています。波巻は並列回路が2個で、直列接続コイルが多くなるので、直列巻とも呼ばれ、高電圧小電流に適しています。
$e=Blv$ [V]
電機子コイルの速度$v$ [m/s]は、直流発電機の電機子の直径をD[m]、回転速度をN[$min^{-1}$]とすると
$v=ωr$
$=\displaystyle\frac{2πN}{60}×\displaystyle\frac{D}{2}=πD\displaystyle\frac{N}{60}$ [m/s]
と表されます。
1極当たりの磁束をφ[Wb]、磁極数をpとすると、平均磁束密度Bは磁束を面積で割ればいいので
$B=\displaystyle\frac{pφ}{S}=\displaystyle\frac{pφ}{πDl}$ [T]
磁極数を2pとする場合が多いかもしれません(?)が、pとしました。
コイル導体1本に誘導される起電力(平均値) e [V]は
$e=Blv=\displaystyle\frac{pφ}{πDl}×l×πD\displaystyle\frac{N}{60}$
$=\displaystyle\frac{pφN}{60}$ [V]
となります。
電機子の総数を z 、並列回路数を a とすると、全体の誘導起電力は
$E=e×\displaystyle\frac{z}{a}$
$=\displaystyle\frac{pφN}{60}×\displaystyle\frac{z}{a}$
$=\displaystyle\frac{pz}{60a}φN=KφN$ [V]
$K=\displaystyle\frac{pz}{60a}$(電圧定数)
重ね巻は並列回路数と磁極数が等しいのでa=p
$E=zφ\displaystyle\frac{N}{60}$ [V]
波巻の並列数は2で磁極数に無関係なので
$E=pzφ\displaystyle\frac{N}{60}$ [V]
※ 画力がないため、図を描いてません。
※ クオリティの高い動画がいっぱい公開されているので、そういったもので確認しておいたほうがいいです。
直流機は無負荷で電流が流れていないときの磁束分布は、界磁磁束だけになります。磁束密度は磁極の中間で零になり、この位置を幾何学的中性軸といいます。
電機子が回転すれば起電力が生じ、同じ方向に電流が流れます。このように電機子電流により磁束が発生する作用を電機子反作用といいます。
負荷電流が流れているときの磁束分布は、磁束が回転方向にずれて中性点の位置がずれます。この位置を電気的中性軸といいます。
電験三種の過去問題(電気技術者試験センター作成)を解くことで、理解しているかどうか確かめましょう。
ただし、ブラシは幾何学的中性軸に位置し、補極及び補償巻線はないものとする。
(1) 0 (2) π/3 (3) π/2 (4) 2π/3 (5) π
$φ=BSN\cosωt$ [Wb]
コイルの誘導起電力は
$E=-\displaystyle\frac{dφ}{dt}$
$=ωBSN\sinωt$ [V]
主磁束に直行する方向に電機子起磁力が発生し、この起磁力と主磁極に生じる界磁起磁力との位相差はπ/2です。
答えは (3)
4極の直流電動機が電機子電流 250A、回転速度 1200$min^{-1}$ で一定の出力で運転されている。電機子導体は波巻であり、全導体数が 258、1極当たりの磁束が 0.020 Wbであるとき、この電動機の出力の値[kW]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、波巻の並列回路数は 2 である。また、ブラシによる電圧降下は無視できるものとする。
(1) 8.21 (2) 12.9 (3) 27.5 (4) 51.6 (5) 55.0
$E=\displaystyle\frac{pz}{60a}φN$
この式で求められます。
電機子電流を$I_a$[A]、出力をP[W]とすると
P=EI_a
$P=EI_a=\displaystyle\frac{pφNz}{60a}I_a$
$=\displaystyle\frac{4×0.020×1200×258}{60×2}×250$
$=51600$ [W] 51.6 [kW]
答えは (4)
直流機では固定子と回転子の間で直流電力と機械動力の変換が行われる。この変換を担う機構の一種にブラシと整流子とがあり、これらを用いた直流機では通常、界磁巻線に直流の界磁電流を流し、( ア )を回転子とする。このブラシと整流子を用いる直流機では、電機子反作用への対策として補償巻線や補極が設けられる。ブラシと整流子を用いる場合には、補極や補償巻線を設けないと、電機子反作用によって、固定子から見た( イ )中性軸の位置が変化するために、これに合わせてブラシを移動しない限りブラシと整流子片との間に( ウ )が生じて整流子片を損傷するおそれがある。なお、小形機では、補償巻線と補極のうち( エ )が一般的に用いられる。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

答えは (3)
これらについて、理解しやすく書いている記事です。
電験三種(機械)の過去問題も書いてあります。
こんな人におすすめ
- 直流機の誘導起電力を知りたい
- 電機子反作用って何?
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直流機の原理

界磁巻線に電流を流すと鉄心に磁束が発生し、端がN極とS極になります。
この空間に回転子(ローター)を設置します。
回転子の軸には整流子をつけてあり、回転子にコイルを巻いて整流子に接続します。整流子にはブラシ(黒鉛)が押し付けてあります。

図は1つのコイルですが実際には多くのコイルが巻かれています。
コイルをN極、S極の間で回転させると誘導起電力が発生し、この誘導起電力は交流電圧なので、整流子とブラシにより直流電圧として取り出します。このように発電するのが、直流発電機です。
脈動の小さい電圧を得るために、多くのコイル、整流子片を用います。コイルの集合体のことを電機子巻線といいます。
電機子巻線
重ね巻と波巻があります。重ね巻は並列巻とも呼ばれ、定電圧大電流に適しています。波巻は並列回路が2個で、直列接続コイルが多くなるので、直列巻とも呼ばれ、高電圧小電流に適しています。
誘導起電力
磁束と直角に置かれた長さ$l$[m]の導体が磁束に直行する方向で速度$v$[m/s]で動くとき、磁束密度をB[T]とすると、誘導起電力$e$ [V]は次の式で表されます。$e=Blv$ [V]
電機子コイルの速度$v$ [m/s]は、直流発電機の電機子の直径をD[m]、回転速度をN[$min^{-1}$]とすると
$v=ωr$
$=\displaystyle\frac{2πN}{60}×\displaystyle\frac{D}{2}=πD\displaystyle\frac{N}{60}$ [m/s]
と表されます。
1極当たりの磁束をφ[Wb]、磁極数をpとすると、平均磁束密度Bは磁束を面積で割ればいいので
$B=\displaystyle\frac{pφ}{S}=\displaystyle\frac{pφ}{πDl}$ [T]
磁極数を2pとする場合が多いかもしれません(?)が、pとしました。
コイル導体1本に誘導される起電力(平均値) e [V]は
$e=Blv=\displaystyle\frac{pφ}{πDl}×l×πD\displaystyle\frac{N}{60}$
$=\displaystyle\frac{pφN}{60}$ [V]
となります。
電機子の総数を z 、並列回路数を a とすると、全体の誘導起電力は
$E=e×\displaystyle\frac{z}{a}$
$=\displaystyle\frac{pφN}{60}×\displaystyle\frac{z}{a}$
$=\displaystyle\frac{pz}{60a}φN=KφN$ [V]
$K=\displaystyle\frac{pz}{60a}$(電圧定数)
重ね巻は並列回路数と磁極数が等しいのでa=p
$E=zφ\displaystyle\frac{N}{60}$ [V]
波巻の並列数は2で磁極数に無関係なので
$E=pzφ\displaystyle\frac{N}{60}$ [V]
※ 画力がないため、図を描いてません。
※ クオリティの高い動画がいっぱい公開されているので、そういったもので確認しておいたほうがいいです。
電機子反作用
直流機は無負荷で電流が流れていないときの磁束分布は、界磁磁束だけになります。磁束密度は磁極の中間で零になり、この位置を幾何学的中性軸といいます。
電機子が回転すれば起電力が生じ、同じ方向に電流が流れます。このように電機子電流により磁束が発生する作用を電機子反作用といいます。
負荷電流が流れているときの磁束分布は、磁束が回転方向にずれて中性点の位置がずれます。この位置を電気的中性軸といいます。
電機子反作用のポイント
- 電機子反作用とは、電機子電流が主磁極による磁束分布に与える影響のこと。
1. 整流の悪化
電気的中性軸が移動する
2. 主磁束が減少する
偏磁作用で有効磁束が減少
3. 整流子片間に火花が発生
電圧が不均一になり、局部的に電圧が高くなる
電機子反作用の防止
補極…整流器電力を与え、電機子反作用を局部的に抑制
補償巻線…電機子起磁力によって発生する交差磁束を打ち消すために、主極片の表面近くに電機子導体と平行に電流方向が逆になるように接続する
電験三種 機械 過去問題 直流機
電験三種の過去問題(電気技術者試験センター作成)を解くことで、理解しているかどうか確かめましょう。
平成16年(2004年) 機械 問2
直流発電機に負荷が加わると、電機子巻線に負荷電流が流れ電機子に起磁力が発生する。主磁極に生じる界磁起磁力の方向を基準としたとき、この電機子の起磁力の方向(電気角)[rad] として、正しいのは次のうちどれか。ただし、ブラシは幾何学的中性軸に位置し、補極及び補償巻線はないものとする。
(1) 0 (2) π/3 (3) π/2 (4) 2π/3 (5) π
平成16年(2004年) 機械 問2 解説
コイル面を通過する磁束数は$φ=BSN\cosωt$ [Wb]
コイルの誘導起電力は
$E=-\displaystyle\frac{dφ}{dt}$
$=ωBSN\sinωt$ [V]
主磁束に直行する方向に電機子起磁力が発生し、この起磁力と主磁極に生じる界磁起磁力との位相差はπ/2です。
答えは (3)
平成27年(2015年) 機械 問1
4極の直流電動機が電機子電流 250A、回転速度 1200$min^{-1}$ で一定の出力で運転されている。電機子導体は波巻であり、全導体数が 258、1極当たりの磁束が 0.020 Wbであるとき、この電動機の出力の値[kW]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、波巻の並列回路数は 2 である。また、ブラシによる電圧降下は無視できるものとする。
(1) 8.21 (2) 12.9 (3) 27.5 (4) 51.6 (5) 55.0
平成27年(2015年) 機械 問1 解説
直流機の誘導起電力は$E=\displaystyle\frac{pz}{60a}φN$
この式で求められます。
電機子電流を$I_a$[A]、出力をP[W]とすると
P=EI_a
$P=EI_a=\displaystyle\frac{pφNz}{60a}I_a$
$=\displaystyle\frac{4×0.020×1200×258}{60×2}×250$
$=51600$ [W] 51.6 [kW]
答えは (4)
平成28年(2016年) 機械 問2
次の文章は、直流機に関する記述である。直流機では固定子と回転子の間で直流電力と機械動力の変換が行われる。この変換を担う機構の一種にブラシと整流子とがあり、これらを用いた直流機では通常、界磁巻線に直流の界磁電流を流し、( ア )を回転子とする。このブラシと整流子を用いる直流機では、電機子反作用への対策として補償巻線や補極が設けられる。ブラシと整流子を用いる場合には、補極や補償巻線を設けないと、電機子反作用によって、固定子から見た( イ )中性軸の位置が変化するために、これに合わせてブラシを移動しない限りブラシと整流子片との間に( ウ )が生じて整流子片を損傷するおそれがある。なお、小形機では、補償巻線と補極のうち( エ )が一般的に用いられる。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

平成28年(2016年) 機械 問2 解説
直流機では固定子と回転子の間で直流電力と機械動力の変換が行われる。この変換を担う機構の一種にブラシと整流子とがあり、これらを用いた直流機では通常、界磁巻線に直流の界磁電流を流し、( 電機子 )を回転子とする。このブラシと整流子を用いる直流機では、電機子反作用への対策として補償巻線や補極が設けられる。ブラシと整流子を用いる場合には、補極や補償巻線を設けないと、電機子反作用によって、固定子から見た( 電気的 )中性軸の位置が変化するために、これに合わせてブラシを移動しない限りブラシと整流子片との間に( 火花 )が生じて整流子片を損傷するおそれがある。なお、小形機では、補償巻線と補極のうち( 補極 )が一般的に用いられる。答えは (3)
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