送配電線路のフェランチ効果、たるみ、需要率、負荷率、不等率
2023/02/07
送電線路において、深夜などの軽負荷時や無負荷時などには受電端電圧が送電端電圧よりも高くなる現象がフェランチ現象です。
電線のたるみの大きさは算出することができます。需要設備と供給設備の関係を表す係数である需要率、負荷率、不等率の意味と計算方法。
これらについて、理解しやすく書いている記事です。
送電線の送電端電圧と受電端電圧は、線路の抵抗、リアクタンス、負荷電力の大きさ、力率で決まります。
負荷の力率が遅れであれば、受電端電圧は抵抗、リアクタンスでの電圧降下で、送電端電圧よりも小さくなります。
負荷の力率が進みの場合は、受電端電圧が送電端電圧よりも大きくなります。これをフェランチ効果といいます。
三相負荷電力

負荷電力というのは電圧、電流、力率で計算できます。

ベクトル図

【解説】
1. 受電端電圧$E_r$を基準にします。
2. 負荷の力率は遅れなので、電流$I$は$E_r$よりθ遅れます。
3. 線路の抵抗Rによる電圧降下RIは、電流 I と同相になるので、$E_r$の先端から I のベクトルと平行方向にRIを描きます。
4. リアクタンスによる電圧降下 XI は、Xが誘導性なので電流 I より位相が90°進みます。90°進んだ XI のベクトルを描きます。
5. 合成ベクトルが送電端電圧$E_s$となります。
ここで、線分OAと線分OBはほぼ等しいので、線分OBの長さを送電端電圧と考えても問題ありません。
線路での電圧降下を v とすると
$v=E_s-E_r$
$=I(R\cosθ+X\sinθ)$ [V]
となります。
Rcosθ+Xsinθ は等価抵抗と呼ばれます。
単相2線式だと2倍にして
$v=2I(R\cosθ+X\sinθ)$ [V]
三相3線式だと、線間電圧が$sqrt{3}$倍になるので
$v=\sqrt{3}I(R\cosθ+X\sinθ)$ [V]
このように計算できます。

【解説】
1. 負荷電流 I は、受電端電圧$E_r$より位相が90°進むので、90°進んだ方向にベクトルを描きます。
2. 抵抗での電圧降下 RI は電流と同相になるので、$E_r$の先端から垂直方向にRIを描きます。
3. リアクタンスでの電圧降下 XI は I より位相が90°進みます。
4. 合成ベクトルが送電端電圧$E_s$です。
受電端電圧が送電端電圧より大きくなることをフェランチ効果といいます。
長距離線路を無負荷で充電したり、深夜の軽負荷時に発生します。
フェランチ効果が発生すると、変圧器などの鉄損増加、寿命が短くなったり、絶縁物劣化など様々な悪影響が出ます。
頻出項目ってわけではないのですが、式さえ覚えておけば解けます。
たった数個の式です。
電線って、ピーンとほぼ水平に張ってるわけじゃなくて、それなりにたるんでますよね。
たるみを小さくすると、電線を短くしたり、鉄塔を低くしたり経済的には良いのですが、電線を強く引っ張ることになるので断線の恐れが出てきます。
逆に、たるみを大きくすると、断線の恐れはなくなりますが、鉄塔を高くしたり、電線の長さを長くしたりと経済的ではありません。
電線はちょうど良いぐらいのたるみにしてあるわけです。

W[kg/m]は電線1m当たりの荷重で、S[m]は径間(指示点間の距離)、T[kg]は最低点の水平張力、D[m]はたるみです。
$D=\displaystyle \frac{ WS^2 }{ 8T }$ [m]
厳しい環境であれば、風圧荷重$w_w$、氷雪荷重$w_i$を考慮して合成荷重で計算する必要があります。
$W=\sqrt{{(w+w_i)}^2+w_{w}^2}$ [kg/m]
電線の長さをL[m]、径間をS[m]、たるみをD[m]とすると、
$L=S+\displaystyle \frac{ 8D^2 }{ 3S }$ [m]
このように計算できます。
温度変化によっても電線の長さは変化します。
温度上昇前の電線の長さを$L_1$[m]、電線の膨張係数をα[1/℃]、温度上昇をt[℃]、温度上昇後の電線の長さを$L_2$[m]とすると、
$L_2=L_1(1+αt)$
となります。
温度上昇後のたるみを$D_2$[m]とすると
$D≒\sqrt{{D_1}^2+\displaystyle \frac{3}{8}S^2αt}$ [m]
と表されます。
需要家の最大需要電力は、電力消費設備(負荷設備)の合計より小さくなります。
需要率は需要家の最大需要電力[kW]と負荷設備容量[kW]の比で表されます。
$需要率=\displaystyle \frac{最大需要電力}{負荷設備容量}×100$ [%]
電力の需要を定量的に表したものが負荷率です。
日負荷率、月負荷率、年負荷率などがあります。
$負荷率=\displaystyle \frac{平均需要電力}{最大需要電力}×100$ [%]
ある期間で、各負荷の合計値を総合負荷の最大値で割った値を不等率といいます。
1より大きい値になり、負荷がバラバラに使用されるほど値が大きくなります。
$不等率$
$=\displaystyle \frac{各個の最大需要電力の和}{合成最大需要電力}×100$ [%]
試験では、この3つの式を変形して色々求めるわけです。
電験三種の過去問題(電気技術者試験センター作成)を解くことで、理解しているかどうか確かめましょう。
上記の記述の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

フェランチ現象の対策として、分路リアクトルを使用したり、電力用コンデンサを軽負荷時に切り離したり、発電機を低励磁運転するなどがあります。
答えは (4)
(1) 受電端電圧の方が送電端電圧より高くなる現象である。
(2) 線路電流が大きい場合より著しく小さい場合に生じることが多い。
(3) 架空送配電線路の負荷側に地中送配電線路が接続されている場合に生じる可能性が高くなる。
(4) 線路電流の位相が電圧に対して遅れている場合に生じることが多い。
(5) 送配電線路のこう長が短い場合より長い場合に生じることが多い。
答えは (4)
(a) 径間を S[m]、電線のたるみを D[m]とするとき、電線の長さ L[m]を示す式として、正しいのは次のうちどれか。
(1) $S+\displaystyle \frac{8D^2}{3S}$ (2) $S+\displaystyle \frac{8D}{3S}$
(3) $S+\displaystyle \frac{3D^2}{8S}$ (4) $S+\displaystyle \frac{3D}{8S}$
(5) $S+\displaystyle \frac{D^2}{3S}$
(b) 架空電線路の径間が 50[m]で、導体の温度が 40[℃]のときのたるみは 1[m]であった。この電線路の導体の温度が 70[℃]になったときのたるみ[m]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、電線の膨張係数は 1[℃]につき 0.000017 とし、張力による電線の伸縮は無視するものとする。
(1) 1.03 (2) 1.14 (3) 1.22 (4) 1.34 (5) 1.47
問題は非常に簡単なものです。
(a)
公式を覚えているかどうかです。
$L=S+\displaystyle \frac{8D^2}{3S}$
答えは (1)
(b)
温度が高いほど電線の長さは長くなります。たるみも大きくなります。
導体の温度が40℃のときの電線の長さを$L_1$とすると
$L_1=50+\displaystyle \frac{8×1^2}{3×50}$
$≒50.0533$[m]
70℃のときの電線の長さを$L_2$とすると
$L_2=50.0533{1+0.000017 (70-40)}$
$≒50.0788$[m]
$L=S+\displaystyle \frac{8D^2}{3S}$より、
$50.078=50+\displaystyle \frac{8D^2}{3×50}$
$D≒1.22$ [m]
温度上昇後のたるみを求める式
$D≒\sqrt{{D_1}^2+\displaystyle \frac{3}{8}S^2αt}$ [m]
これを覚えてる方はすぐ解けます。
別に覚えておかなくてもいい式です。
答えは (3)
電線のたるみの大きさは算出することができます。需要設備と供給設備の関係を表す係数である需要率、負荷率、不等率の意味と計算方法。
これらについて、理解しやすく書いている記事です。
こんな人におすすめ
- 電線の電圧降下の計算方法を知りたい
- たるみの公式は?
- 需要設備と供給設備の関係を知りたい
スポンサー
送電線の電圧降下
送電線の送電端電圧と受電端電圧は、線路の抵抗、リアクタンス、負荷電力の大きさ、力率で決まります。
負荷の力率が遅れであれば、受電端電圧は抵抗、リアクタンスでの電圧降下で、送電端電圧よりも小さくなります。
負荷の力率が進みの場合は、受電端電圧が送電端電圧よりも大きくなります。これをフェランチ効果といいます。
三相負荷電力

負荷電力というのは電圧、電流、力率で計算できます。
電圧降下(遅れ力率)
下図のような単相交流で考えます。
ベクトル図

【解説】
1. 受電端電圧$E_r$を基準にします。
2. 負荷の力率は遅れなので、電流$I$は$E_r$よりθ遅れます。
3. 線路の抵抗Rによる電圧降下RIは、電流 I と同相になるので、$E_r$の先端から I のベクトルと平行方向にRIを描きます。
4. リアクタンスによる電圧降下 XI は、Xが誘導性なので電流 I より位相が90°進みます。90°進んだ XI のベクトルを描きます。
5. 合成ベクトルが送電端電圧$E_s$となります。
ここで、線分OAと線分OBはほぼ等しいので、線分OBの長さを送電端電圧と考えても問題ありません。
線路での電圧降下を v とすると
$v=E_s-E_r$
$=I(R\cosθ+X\sinθ)$ [V]
となります。
Rcosθ+Xsinθ は等価抵抗と呼ばれます。
単相2線式だと2倍にして
$v=2I(R\cosθ+X\sinθ)$ [V]
三相3線式だと、線間電圧が$sqrt{3}$倍になるので
$v=\sqrt{3}I(R\cosθ+X\sinθ)$ [V]
このように計算できます。
フェランチ効果
負荷としてコンデンサを接続します。
【解説】
1. 負荷電流 I は、受電端電圧$E_r$より位相が90°進むので、90°進んだ方向にベクトルを描きます。
2. 抵抗での電圧降下 RI は電流と同相になるので、$E_r$の先端から垂直方向にRIを描きます。
3. リアクタンスでの電圧降下 XI は I より位相が90°進みます。
4. 合成ベクトルが送電端電圧$E_s$です。
受電端電圧が送電端電圧より大きくなることをフェランチ効果といいます。
長距離線路を無負荷で充電したり、深夜の軽負荷時に発生します。
フェランチ効果が発生すると、変圧器などの鉄損増加、寿命が短くなったり、絶縁物劣化など様々な悪影響が出ます。
電線路のたるみ
頻出項目ってわけではないのですが、式さえ覚えておけば解けます。
たった数個の式です。
電線って、ピーンとほぼ水平に張ってるわけじゃなくて、それなりにたるんでますよね。
たるみを小さくすると、電線を短くしたり、鉄塔を低くしたり経済的には良いのですが、電線を強く引っ張ることになるので断線の恐れが出てきます。
逆に、たるみを大きくすると、断線の恐れはなくなりますが、鉄塔を高くしたり、電線の長さを長くしたりと経済的ではありません。
電線はちょうど良いぐらいのたるみにしてあるわけです。
たるみの大きさ
たるみの曲線をカテナリー曲線といいます。
W[kg/m]は電線1m当たりの荷重で、S[m]は径間(指示点間の距離)、T[kg]は最低点の水平張力、D[m]はたるみです。
$D=\displaystyle \frac{ WS^2 }{ 8T }$ [m]
厳しい環境であれば、風圧荷重$w_w$、氷雪荷重$w_i$を考慮して合成荷重で計算する必要があります。
$W=\sqrt{{(w+w_i)}^2+w_{w}^2}$ [kg/m]
電線の長さをL[m]、径間をS[m]、たるみをD[m]とすると、
$L=S+\displaystyle \frac{ 8D^2 }{ 3S }$ [m]
このように計算できます。
温度変化によっても電線の長さは変化します。
温度上昇前の電線の長さを$L_1$[m]、電線の膨張係数をα[1/℃]、温度上昇をt[℃]、温度上昇後の電線の長さを$L_2$[m]とすると、
$L_2=L_1(1+αt)$
となります。
温度上昇後のたるみを$D_2$[m]とすると
$D≒\sqrt{{D_1}^2+\displaystyle \frac{3}{8}S^2αt}$ [m]
と表されます。
需要率
需要家の最大需要電力は、電力消費設備(負荷設備)の合計より小さくなります。
需要率は需要家の最大需要電力[kW]と負荷設備容量[kW]の比で表されます。
$需要率=\displaystyle \frac{最大需要電力}{負荷設備容量}×100$ [%]
負荷率
電力の需要を定量的に表したものが負荷率です。
日負荷率、月負荷率、年負荷率などがあります。
$負荷率=\displaystyle \frac{平均需要電力}{最大需要電力}×100$ [%]
不等率
ある期間で、各負荷の合計値を総合負荷の最大値で割った値を不等率といいます。
1より大きい値になり、負荷がバラバラに使用されるほど値が大きくなります。
$不等率$
$=\displaystyle \frac{各個の最大需要電力の和}{合成最大需要電力}×100$ [%]
試験では、この3つの式を変形して色々求めるわけです。
電験三種 電力 過去問題 送配電
電験三種の過去問題(電気技術者試験センター作成)を解くことで、理解しているかどうか確かめましょう。
平成19年(2007年) 電力 問9
交流送電線の受電端電圧値は送電端電圧より低いのが普通である。しかし、線路電圧が高く、こう長が( ア )なると、受電端が開放又は軽負荷の状態では、線路定数のうち( イ )の影響が大きくなり、( ウ )電流が線路に流れる。このため、受電端電圧値は送電端電圧値より大きくなることがある。これを( エ )現象という。このような現象を抑制するために、( オ )を接続するなどの対策が講じられている。上記の記述の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

平成19年(2007年) 電力 問9 解説
交流送電線の受電端電圧値は送電端電圧より低いのが普通である。しかし、線路電圧が高く、こう長が( 長く )なると、受電端が開放又は軽負荷の状態では、線路定数のうち( 静電容量 )の影響が大きくなり、( 進み )電流が線路に流れる。このため、受電端電圧値は送電端電圧値より大きくなることがある。これを( フェランチ )現象という。このような現象を抑制するために、( 分路リアクトル )を接続するなどの対策が講じられている。フェランチ現象の対策として、分路リアクトルを使用したり、電力用コンデンサを軽負荷時に切り離したり、発電機を低励磁運転するなどがあります。
答えは (4)
平成24年(2012年) 電力 問12
送配電線路のフェランチ効果に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。(1) 受電端電圧の方が送電端電圧より高くなる現象である。
(2) 線路電流が大きい場合より著しく小さい場合に生じることが多い。
(3) 架空送配電線路の負荷側に地中送配電線路が接続されている場合に生じる可能性が高くなる。
(4) 線路電流の位相が電圧に対して遅れている場合に生じることが多い。
(5) 送配電線路のこう長が短い場合より長い場合に生じることが多い。
平成24年(2012年) 電力 問12 解説
フェランチ効果は線路電流の位相が電圧に対して進んでいる場合に生じることが多いです。答えは (4)
平成15年(2003年) 電力 問16
架空電線路の径間、電線の長さ及びたるみに関して、次の(a)及び(b)に答えよ。(a) 径間を S[m]、電線のたるみを D[m]とするとき、電線の長さ L[m]を示す式として、正しいのは次のうちどれか。
(1) $S+\displaystyle \frac{8D^2}{3S}$ (2) $S+\displaystyle \frac{8D}{3S}$
(3) $S+\displaystyle \frac{3D^2}{8S}$ (4) $S+\displaystyle \frac{3D}{8S}$
(5) $S+\displaystyle \frac{D^2}{3S}$
(b) 架空電線路の径間が 50[m]で、導体の温度が 40[℃]のときのたるみは 1[m]であった。この電線路の導体の温度が 70[℃]になったときのたるみ[m]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、電線の膨張係数は 1[℃]につき 0.000017 とし、張力による電線の伸縮は無視するものとする。
(1) 1.03 (2) 1.14 (3) 1.22 (4) 1.34 (5) 1.47
平成15年(2003年) 電力 問16 解説
「たるみ」がB問題で出題されるのはレアケースです。問題は非常に簡単なものです。
(a)
公式を覚えているかどうかです。
$L=S+\displaystyle \frac{8D^2}{3S}$
答えは (1)
(b)
温度が高いほど電線の長さは長くなります。たるみも大きくなります。
導体の温度が40℃のときの電線の長さを$L_1$とすると
$L_1=50+\displaystyle \frac{8×1^2}{3×50}$
$≒50.0533$[m]
70℃のときの電線の長さを$L_2$とすると
$L_2=50.0533{1+0.000017 (70-40)}$
$≒50.0788$[m]
$L=S+\displaystyle \frac{8D^2}{3S}$より、
$50.078=50+\displaystyle \frac{8D^2}{3×50}$
$D≒1.22$ [m]
温度上昇後のたるみを求める式
$D≒\sqrt{{D_1}^2+\displaystyle \frac{3}{8}S^2αt}$ [m]
これを覚えてる方はすぐ解けます。
別に覚えておかなくてもいい式です。
答えは (3)
- 関連記事
-
- 配電線路 樹枝状方式、環状方式の電圧降下
- 送配電線路のフェランチ効果、たるみ、需要率、負荷率、不等率