原子力発電の仕組み、その他の発電
2023/01/28
原子力発電は原子の核分裂反応による熱エネルギーを利用して蒸気を作り、火力発電と同じようにタービンを回して発電します。その他の発電はディーゼル発電、ガスタービン発電、地熱発電、潮力発電、太陽光発電、風力発電、波力発電、燃料電池、バイオマス発電などがあります。
これらについて、理解しやすく書いている記事です。
電験三種(電力)の過去問題も書いているので、解けるかどうか試してみてください。
原子炉の中で原子の核分裂連鎖反応を制御して、発生した熱で蒸気を作って、火力発電のようにタービンを回し発電します。
$E=mc^2$ [J]
c : 高速(3×$10^8$ [m/s])
ウランやプルトニウムは中性子がぶつかることで核分裂を起こし、多量のエネルギーを放出します。これは、原子の結合エネルギーが開放されることで生じています。原子核が核分裂すると、2~3個の中性子が飛び出し、それがほかの原子の原子核にぶつかり核分裂を起こします。連鎖的に起こるので、核分裂連鎖反応といいます。

天然ウランは99%以上が核分裂しにくいウラン238で、核燃料になるウラン235は約0.7%です。
減速材には軽水、重水、黒鉛、ベリリウムなどがあります。
中性子を吸収しやすく長期的に使えるカドミウム、ホウ素、ハフニウムなどが用いられます。
軽水、重水、炭酸ガス、ヘリウム、液体ナトリウムなどが用いられます。
軽水、重水、黒鉛などが用いられます。
鉄、コンクリート、ボロン鋼、鉛、水などが用いられます。
原子炉の形式、核燃料、減速材、冷却材の組合せは確実に覚えておく必要があります。
例えば
軽水炉の場合
核燃料 低濃縮ウラン
減速材 軽水
冷却材 軽水
ガス冷却炉の場合
核燃料 天然ウラン
減速材 黒鉛
冷却材 炭酸ガス
日本の原子力発電の多くは軽水炉形式です。
両形式とも核燃料は低濃縮ウランを使用しています。
沸騰水型軽水炉
原子炉内で蒸気を発生させてタービンを回します。
加圧水型軽水炉
原子炉内の一次ループの水は沸騰しない程度に加圧しておき、熱交換器を通して二次ループに熱を移動させます。二次ループの水は熱交換器内で蒸気を発生させタービンを回します。
ボイラ、復水器を使わないので多量の水は必要なし。
燃料が重油なので、輸送貯蔵が便利。
始動が簡単で、負荷に関係なく熱効率が良い。
1kW当たりでみると建設費が高い。
回転速度に脈動があり、振動が大きい。
燃料の重油は石炭より高い。
オープンサイクルガスタービン
汽力発電に比べて構造が簡単。
運転操作が簡単で人員が少なくてすむ。
設備場所はある程度自由。
建設費が安いし、期間も短い。
ガス温度が高いので、耐熱材料が必要(高額)。
騒音が発生するので消音器が必要。
外気温が上がれば出力が低下。
クローズドサイクルガスタービン
騒音が小さい。
外気の影響を受けない。
設備が複雑なので保守運転が難しい。
単純な構造なので、保守が簡単。
太陽があればいいので、どこでも発電できる。
高性能の太陽電池は高価。
エネルギー密度、変換効率が低い。
温度の影響を受ける。
他の発電も見ておく必要があります。
電験三種の過去問題(電気技術者試験センター作成)を解くことで、理解しているかどうか確かめましょう。
原子力発電は、ウラン等原子燃料の( オ )の前後における原子核の結合のエネルギーの差を利用したものである。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

原子力発電は、ウラン等原子燃料の核分裂の前後における原子核の結合のエネルギーの差を利用したものである。
答えは (4)
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

答えは (1)
ただし、石炭の発熱量を 25,000 [kJ/kg] とする。
(1) 32 (2) 320 (3) 1600 (4) 3200 (5) 6400
電験三種を受ける人は、1[g]のウラン235の核分裂での質量欠損0.09%によるエネルギーの石炭換算値、石油換算値を知っているはずです。
石炭だと約3トン
石油だと約2,000リットル
$E=mc^2=1×10^{-3}×0.09×10^{-2}×(3×10^8)^2$
$=8.1×10^10$ [J]
$8.1×10^7$ [kJ]
石炭に換算すると
$8.1×10^7÷25000=3240$[kg]
答えは (4)
ただし、重油発熱量を 43000[kJ/ℓ]とする。
(1) 950 (2) 1900 (3) 9500 (4) 19000 (5) 38000
$E=mc^2=0.01×0.09×10^{-2}×(3×10^8)^2$
$=8.1×10^8$[kJ]
重油に換算すると
$8.1×10^8÷43000=18837$[ℓ]
答えは(4)
(1) リチウムイオン電池、NAS電池、ニッケル水素電池は、繰り返し充放電ができる二次電池として知られている。
(2) 二次電池の充電法として、整流器を介して負荷に電力を常時供給しながら二次電池への充電を行う浮動充電方式がある。
(3) 二次電池を活用した無停電電源システムは、商用電源が停電したとき、瞬時に二次電池から負荷に電力を供給する。
(4) 風力発電や太陽光発電などの出力変動を抑制するために、二次電池が利用されることもある。
(5) 鉛蓄電池の充電方式として、一般的に、整流器の定格電圧で回復充電を行い、その後、定電流で満充電状態になるまで充電する。
蓄電池のことを二次電池といいます。
(2) 正しい
浮動充電(フローティングチャージ)方式は蓄電池に対し充電回路と負荷が常に並列接続された状態で充電する充電方式です。
(3) 正しい
(4) 正しい
風力や太陽光は安定していない(刻々と出力変動する)ため、それを抑制するために蓄電池を設置することがあります。
(5) 誤り
定格電圧で回復充電するのではなく、高電圧で充電します。あとは定格電圧で満充電状態になるまで充電します。
答えは (5)
(1) 燃料電池発電は、水素と酸素との化学反応を利用して直流の電力を発生させる。化学反応で発生する熱は給湯などに利用できる。
(2) 貯水池式発電は水力発電の一種であり、季節的に変動する河川流量を貯水して使用することができる。
(3) バイオマス発電は、植物などの有機物から得られる燃料を利用した発電方式である。さとうきびから得られるエタノールや、家畜の糞から得られるメタンガスなどが燃料として用いられている。
(4) 風力発電は、風のエネルギーによって風車で発電機を駆動し発電を行う。風力発電で取り出せる電力は、損失を無視すると、風速の2乗に比例する。
(5) 太陽光発電は、太陽電池によって直流の電力を発生させる。需要地点で発電が可能、発生電力の変動が大きい、などの特徴がある。
答えは (4)
これらについて、理解しやすく書いている記事です。
電験三種(電力)の過去問題も書いているので、解けるかどうか試してみてください。
こんな人におすすめ
- 原子力発電を理解したい
- その他の発電を知りたい
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原子力発電所
原子炉の中で原子の核分裂連鎖反応を制御して、発生した熱で蒸気を作って、火力発電のようにタービンを回し発電します。
相対性理論
質量欠損を m[kg]とすれば、核分裂により得られるエネルギー E [J]は次の式で求められます。$E=mc^2$ [J]
c : 高速(3×$10^8$ [m/s])
核分裂
原子は原子核とその周りをまわる電子により構成されています。原子核は正電荷を帯びた陽子と電気的に中性な中性子からできています。ウランやプルトニウムは中性子がぶつかることで核分裂を起こし、多量のエネルギーを放出します。これは、原子の結合エネルギーが開放されることで生じています。原子核が核分裂すると、2~3個の中性子が飛び出し、それがほかの原子の原子核にぶつかり核分裂を起こします。連鎖的に起こるので、核分裂連鎖反応といいます。
原子炉の構成

核燃料
核燃料には、ウラン235、プルトニウム238などがあります。天然ウランは99%以上が核分裂しにくいウラン238で、核燃料になるウラン235は約0.7%です。
減速材
核分裂により生じる中性子(高速中性子)は、エネルギーが大きすぎて核分裂には不向きです。だから、エネルギーを低下させる必要があります。そこで、減速材で高速中性子を熱中性子に変えて核分裂をさせます。減速材には軽水、重水、黒鉛、ベリリウムなどがあります。
制御棒
原子炉の中性子を吸収して、熱中性子が燃焼に衝突する割合を制御します。中性子を吸収しやすく長期的に使えるカドミウム、ホウ素、ハフニウムなどが用いられます。
冷却材
核分裂により発生した熱を外部に取り出すためのものです。軽水、重水、炭酸ガス、ヘリウム、液体ナトリウムなどが用いられます。
反射材
反射材は、中性子が原子炉の外に漏れるのを防止し、炉心へ戻すためのものです。中性子を反射します。軽水、重水、黒鉛などが用いられます。
遮へい壁
遮へい壁は原子炉内の熱を放射線を外部に漏れないようにするためのものです。鉄、コンクリート、ボロン鋼、鉛、水などが用いられます。
原子炉の形式、核燃料、減速材、冷却材の組合せは確実に覚えておく必要があります。
例えば
軽水炉の場合
核燃料 低濃縮ウラン
減速材 軽水
冷却材 軽水
ガス冷却炉の場合
核燃料 天然ウラン
減速材 黒鉛
冷却材 炭酸ガス
原子炉の種類
日本の原子力発電の多くは軽水炉形式です。
軽水炉
軽水炉の冷却材、減速材には水を使います。減速材、冷却材が水(軽水)なので、経済的です。沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PER)があります。両形式とも核燃料は低濃縮ウランを使用しています。
沸騰水型軽水炉
原子炉内で蒸気を発生させてタービンを回します。
加圧水型軽水炉
原子炉内の一次ループの水は沸騰しない程度に加圧しておき、熱交換器を通して二次ループに熱を移動させます。二次ループの水は熱交換器内で蒸気を発生させタービンを回します。
その他の発電
ディーゼル発電
ボイラが必要ないので、設備費が少なく保守が簡単。ボイラ、復水器を使わないので多量の水は必要なし。
燃料が重油なので、輸送貯蔵が便利。
始動が簡単で、負荷に関係なく熱効率が良い。
1kW当たりでみると建設費が高い。
回転速度に脈動があり、振動が大きい。
燃料の重油は石炭より高い。
ガスタービン発電
オープンサイクルガスタービンとクローズドサイクルガスタービンがあります。オープンサイクルガスタービン
汽力発電に比べて構造が簡単。
運転操作が簡単で人員が少なくてすむ。
設備場所はある程度自由。
建設費が安いし、期間も短い。
ガス温度が高いので、耐熱材料が必要(高額)。
騒音が発生するので消音器が必要。
外気温が上がれば出力が低下。
クローズドサイクルガスタービン
騒音が小さい。
外気の影響を受けない。
設備が複雑なので保守運転が難しい。
地熱発電
地下から噴出する蒸気で発電します。良い蒸気があるところであれば、有利な発電方法です。熱サイクルで分けると直接法と間接法があります。太陽光発電
太陽電池が光を受けると電気を発生することを利用しています。単純な構造なので、保守が簡単。
太陽があればいいので、どこでも発電できる。
高性能の太陽電池は高価。
エネルギー密度、変換効率が低い。
温度の影響を受ける。
風力発電
風の力で風車を回して発電する方法です。連続して風がある場所に設置します。大型のものもありますが、小規模なものが多いです。他の発電も見ておく必要があります。
電験三種 電力 過去問題 原子力発電・その他の発電
電験三種の過去問題(電気技術者試験センター作成)を解くことで、理解しているかどうか確かめましょう。
平成13年(2001年) 電力 問3
原子核は、正の電荷をもつ陽子と電荷をもたない( ア )とが結合したものである。原子核の質量は、陽子と( ア )の個々の質量の合計より( イ )。この差を( ウ )といい、結合時にはこれに相当する結合エネルギーが放出される。この質量の差を m [kg]、光の速度を c [m/s]とすると、放出されるエネルギーE[J]は( エ )に等しい。原子力発電は、ウラン等原子燃料の( オ )の前後における原子核の結合のエネルギーの差を利用したものである。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

平成13年(2001年) 電力 問3 解説
原子核は、正の電荷をもつ陽子と電荷をもたない中性子とが結合したものである。原子核の質量は、陽子と中性子の個々の質量の合計より小さい。この差を質量欠損といい、結合時にはこれに相当する結合エネルギーが放出される。この質量の差を m [kg]、光の速度を c [m/s]とすると、放出されるエネルギーE[J]は$mc^2$に等しい。原子力発電は、ウラン等原子燃料の核分裂の前後における原子核の結合のエネルギーの差を利用したものである。
答えは (4)
平成14年(2002年) 電力 問3
我が国の原子力発電所で用いられる軽水炉では、水が( ア )と減速材を兼ねている。もし、何らかの原因で核分裂反応が増大し出力が増加して水の温度が上昇すると、水の密度が( イ )し、中性子の減速効果が低下する。その結果、核分裂に寄与する( ウ )が減少し、核分裂は自動的に( エ )される。このような特性を軽水炉の固有の安全性又は自己制御性という。上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

平成14年(2002年) 電力 問3 解説
我が国の原子力発電所で用いられる軽水炉では、水が( 冷却材 )と減速材を兼ねている。もし、何らかの原因で核分裂反応が増大し出力が増加して水の温度が上昇すると、水の密度が( 減少 )し、中性子の減速効果が低下する。その結果、核分裂に寄与する( 熱中性子 )が減少し、核分裂は自動的に( 抑制 )される。このような特性を軽水炉の固有の安全性又は自己制御性という。答えは (1)
平成16年(2004年) 電力 問4
1 [g]のウラン235が核分裂し、0.09[%]の質量欠損が生じたとき、発生するエネルギーを石炭に換算した値 [kg] として、最も近いのは次のうちどれか。ただし、石炭の発熱量を 25,000 [kJ/kg] とする。
(1) 32 (2) 320 (3) 1600 (4) 3200 (5) 6400
平成16年(2004年) 電力 問4 解説
これは、絶対正解させたいんだろうなって問題です。電験三種を受ける人は、1[g]のウラン235の核分裂での質量欠損0.09%によるエネルギーの石炭換算値、石油換算値を知っているはずです。
石炭だと約3トン
石油だと約2,000リットル
$E=mc^2=1×10^{-3}×0.09×10^{-2}×(3×10^8)^2$
$=8.1×10^10$ [J]
$8.1×10^7$ [kJ]
石炭に換算すると
$8.1×10^7÷25000=3240$[kg]
答えは (4)
平成24年(2012年) 電力 問4
0.01[kg]のウラン235が核分裂するときに0.09[%]の質量欠損が生じるとする。これにより発生するエネルギーと同じだけの熱を得るのに必要な重油の量[ℓ]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、重油発熱量を 43000[kJ/ℓ]とする。
(1) 950 (2) 1900 (3) 9500 (4) 19000 (5) 38000
平成24年(2012年) 電力 問4 解説
定番の「1g」ではなく、「10g」になっています。$E=mc^2=0.01×0.09×10^{-2}×(3×10^8)^2$
$=8.1×10^8$[kJ]
重油に換算すると
$8.1×10^8÷43000=18837$[ℓ]
答えは(4)
平成26年(2014年) 電力 問5
二次電池に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。(1) リチウムイオン電池、NAS電池、ニッケル水素電池は、繰り返し充放電ができる二次電池として知られている。
(2) 二次電池の充電法として、整流器を介して負荷に電力を常時供給しながら二次電池への充電を行う浮動充電方式がある。
(3) 二次電池を活用した無停電電源システムは、商用電源が停電したとき、瞬時に二次電池から負荷に電力を供給する。
(4) 風力発電や太陽光発電などの出力変動を抑制するために、二次電池が利用されることもある。
(5) 鉛蓄電池の充電方式として、一般的に、整流器の定格電圧で回復充電を行い、その後、定電流で満充電状態になるまで充電する。
平成26年(2014年) 電力 問5 解説
(1) 正しい蓄電池のことを二次電池といいます。
(2) 正しい
浮動充電(フローティングチャージ)方式は蓄電池に対し充電回路と負荷が常に並列接続された状態で充電する充電方式です。
(3) 正しい
(4) 正しい
風力や太陽光は安定していない(刻々と出力変動する)ため、それを抑制するために蓄電池を設置することがあります。
(5) 誤り
定格電圧で回復充電するのではなく、高電圧で充電します。あとは定格電圧で満充電状態になるまで充電します。
答えは (5)
平成28年(2016年) 電力 問5
各種の発電に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。(1) 燃料電池発電は、水素と酸素との化学反応を利用して直流の電力を発生させる。化学反応で発生する熱は給湯などに利用できる。
(2) 貯水池式発電は水力発電の一種であり、季節的に変動する河川流量を貯水して使用することができる。
(3) バイオマス発電は、植物などの有機物から得られる燃料を利用した発電方式である。さとうきびから得られるエタノールや、家畜の糞から得られるメタンガスなどが燃料として用いられている。
(4) 風力発電は、風のエネルギーによって風車で発電機を駆動し発電を行う。風力発電で取り出せる電力は、損失を無視すると、風速の2乗に比例する。
(5) 太陽光発電は、太陽電池によって直流の電力を発生させる。需要地点で発電が可能、発生電力の変動が大きい、などの特徴がある。
平成28年(2016年) 電力 問5 解説
風のエネルギーは風速と受風面積、速の3乗に比例します。答えは (4)